SMARTリカバリーとAA、どちらが自分に合う?10の違い

AAとSMARTリカバリーは、どちらも断酒を支える自助グループです。ただ、考え方もミーティングの雰囲気も大きく違います。この記事では両者の哲学やスピリチュアリティの扱い、効果に関する研究、向いている人、初めて参加するときの手順を10のポイントで比べます。

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Photo by Ross Sneddon on Unsplash

世界で200万人以上が参加しているとされるAA(アルコホーリクス・アノニマス)と、科学的な心理療法を土台にしたSMARTリカバリー。お酒をやめようと決めて自助グループを探すと、たいていこの2つの名前に出会います。

「SMARTリカバリーとAAの違いがよくわからない」「宗教っぽいのは苦手だけど、ひとりで頑張るのも限界」。そんな気持ちを抱えている方は少なくありません。

結論からお伝えすると、どちらが「正しい」ということはありません。大切なのは、あなたが続けられる場所かどうかです。この記事では、2つのグループを10のポイントで公平に比べていきます。

1. 根本の考え方:「無力を認める」か「自分で選ぶ力を育てる」か

AAは1935年にアメリカで生まれた、最も歴史の長い断酒の自助グループです。回復の道筋として「12のステップ」があり、その第一歩は「アルコールに対して無力であることを認める」ことから始まります。

この「無力を認める」という言葉は、弱さを責めるものではありません。意志の力だけで戦うのをやめ、仲間や自分より大きな力に助けを求める。そうした発想の転換を意味しています。

一方、SMARTリカバリー(Self-Management and Recovery Training)は1994年に始まりました。土台にあるのは認知行動療法(CBT)や動機づけ面接など、効果が確かめられた心理療法の考え方です。

SMARTでは「自分には変わる力がある」という前提に立ちます。次の4つの柱で、自分を管理するスキルを身につけていきます。

  • 動機を育て、保つ:なぜやめたいのかを明確にする
  • 渇望に対処する:飲みたい気持ちが来たときの具体的な対処法
  • 考え・感情・行動を管理する:飲酒につながる思考パターンを見直す
  • バランスのとれた生活を送る:お酒に頼らない満足感を見つける

2. ミーティングの雰囲気:体験を「語る」か、課題を「話し合う」か

AAのミーティングの中心は「分かち合い」です。参加者が順番に自分の経験や気持ちを話し、ほかの人は口を挟まずに耳を傾けます。助言や反論をしない「言いっぱなし・聞きっぱなし」が基本ルールです。

他人の話の中に自分の姿を見つけ、「自分だけじゃなかった」と感じられる。そこにAAの大きな力があります。

SMARTリカバリーのミーティングは、もう少し対話型です。訓練を受けたファシリテーター(進行役)がいて、参加者は「今週うまくいったこと・困ったこと」を共有します。そのあと、グループ全体で具体的な対処法を話し合います。

ホワイトボードにワークシートを書き出すこともあり、雰囲気は「勉強会」に近いと感じる人もいます。

3. スピリチュアリティの扱い:「ハイヤーパワー」をどう考えるか

ここが、多くの人が最も気にするポイントかもしれません。AAの12ステップには「神」や「ハイヤーパワー(自分を超えた大きな力)」という言葉がたびたび出てきます。

ただし、AAは特定の宗教や宗派とは結びついていません。ハイヤーパワーの解釈は個人に任されています。「グループそのもの」「自然」「回復した仲間たちの知恵」と捉える人もたくさんいます。無宗教の方や、無神論者向けのミーティングがある地域もあります。

それでも、ミーティングの最後に祈りの言葉(平安の祈り)を唱える習慣に違和感を覚える人がいるのも事実です。

SMARTリカバリーは、スピリチュアルな要素を持たない、世俗的なプログラムです。信仰を持つことを否定もしませんし、求めもしません。「宗教的な言葉に抵抗がある」という理由で、SMARTを選ぶ人は多くいます。

4. 研究で見るAAの効果:エビデンスは意外と強い

「AAは昔ながらの方法で、科学的根拠は弱いのでは?」と思われがちです。ところが近年の研究では、AAの評価はむしろ高まっています。

2020年に発表されたコクラン・レビュー(Kelly らによる系統的レビュー)は、1万人以上を対象とした27の研究を分析しました。その結果、AAや12ステップへの参加を促す介入は、断酒の継続率において、CBTなどほかの確立された治療法と同等か、それ以上の効果を示しました。

特に「完全に断酒を続けられた人の割合」では、AAが優れている傾向が見られました。また、医療費の削減につながる可能性も報告されています。

AAの強みとして研究者がよく挙げるのは、お酒を飲まない人間関係が自然に広がることです。毎日どこかでミーティングがあり、いつでも頼れる。そうした「つながりの量」が、効果の大きな理由だと考えられています。

5. 研究で見るSMARTリカバリーの効果:有望だが研究はまだ少なめ

SMARTリカバリーに関する研究は、AAに比べるとまだ数が限られています。それでも、これまでの研究結果は前向きなものです。

アメリカで行われた比較研究(Zemore らによる2018年の研究)では、SMART、AA、ほかの世俗的なグループの参加者を追跡しました。その結果、どのグループでも、熱心に参加している人ほど良い結果が出ていました。グループの種類よりも、関わりの深さが大きく影響していたのです。

また、SMARTの土台である認知行動療法そのものは、アルコール依存症の治療法として十分な裏づけがあります。アメリカ国立アルコール乱用・依存症研究所(NIAAA)も、行動療法と自助グループを回復を支える選択肢として紹介しています。

研究から言えるのは、「どのグループか」よりも「続けて参加するかどうか」が鍵だということです。

6. 「アルコール依存症者」というラベルへの考え方

AAのミーティングでは、話す前に「アルコホーリクの○○です」と名乗る習慣があります。自分の問題を認め、ごまかさずに向き合うための大切な儀式とされています。

この名乗りに救われたという人もいれば、ラベルを貼られることに抵抗を感じる人もいます。

SMARTリカバリーでは、「アルコホーリク」や「依存症者」といったラベルを使うことを求めません。名前だけで自己紹介し、ラベルではなく行動の変化に焦点を当てます。

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また、SMARTはアルコールだけでなく、薬物、ギャンブル、買い物、食べ物など、さまざまな依存的行動を一つのミーティングで扱います。AAはアルコール専門で、薬物にはNA(ナルコティクス・アノニマス)など別の12ステップグループがあります。

7. サポートの仕組み:スポンサー制度かツール中心か

AAの特徴的な仕組みが「スポンサー」です。断酒歴の長い先輩メンバーが、新しいメンバーの相談相手になり、12ステップを一緒に進めてくれます。

夜中に飲みたくなったとき、電話できる相手がいる。この一対一の関係は、特に孤独を感じやすい人にとって強い支えになります。

SMARTリカバリーにはスポンサー制度はありません。その代わりに、具体的な「ツール」が用意されています。

  • 費用対効果分析(CBA):飲むこと・やめることの、短期と長期のメリットとデメリットを書き出す
  • ABC分析:きっかけとなる出来事(A)、信念(B)、結果(C)を整理し、非合理的な考えを見直す
  • DEADS:渇望が来たときに「先延ばしする、気をそらす、避ける、否定する、置き換える」を試す

たとえば、同じ考えが頭の中をぐるぐる回って飲みたくなる方には、ABC分析が役立つかもしれません。禁酒初期の反すう思考を止める方法もあわせて参考にしてください。

8. 日本で参加しやすいのはどちら?断酒会という選択肢も

日本に住んでいる場合、現実的な「参加しやすさ」も大切な判断材料です。

AAは日本全国にグループがあり、日本語のミーティングが毎日のようにどこかで開かれています。オンラインミーティングも充実しています。

SMARTリカバリーは、日本国内の対面ミーティングはまだごく限られています。中心となるのは英語のオンラインミーティングです。英語に抵抗がなければ、世界中のミーティングに毎日参加できます。

そして日本には、独自に発展した断酒会(全日本断酒連盟)もあります。12ステップではなく、宗教色もありません。家族と一緒に参加できる例会が多く、日本の文化に根ざした自助グループです。

厚生労働省のe-ヘルスネットでも、AAや断酒会などの自助グループは、専門治療と並ぶ回復の重要な資源として紹介されています。また国立精神・神経医療研究センターは、認知行動療法をもとにした依存症の回復プログラムの開発・普及に取り組んでいます。SMARTに近い考え方を日本語で学びたい方は、医療機関や精神保健福祉センターで行われているこうしたプログラムを探すのもひとつの方法です。

9. あなたにはどちらが合う?タイプ別の目安

あくまで目安ですが、次のような傾向があります。

AAが合いやすい人

  • 人の体験談を聞くことで、気持ちが動きやすい
  • スポンサーのような、頼れる一対一の関係がほしい
  • スピリチュアルな考え方に抵抗がない、または興味がある
  • 完全な断酒を目指している
  • 日本語で、近所で、頻繁にミーティングに参加したい

SMARTリカバリーが合いやすい人

  • 宗教的・スピリチュアルな言葉に違和感がある
  • ワークシートやツールなど、具体的な方法を学びたい
  • 「依存症者」というラベルに抵抗がある
  • アルコール以外の依存的行動にも取り組みたい
  • カウンセリングでCBTを受けたことがあり、相性が良かった

実は、両方に参加している人も少なくありません。AAでつながりを得て、SMARTでスキルを学ぶ。それもまったく問題のない選び方です。

たとえば、時間を持て余して飲んでしまうタイプの方は、ミーティングに通うこと自体が生活の新しいリズムになります。退屈で飲んでしまう人の禁酒法も参考になるはずです。

10. 初めてのミーティングに参加するための実践ステップ

最初の一歩が一番緊張するものです。次の手順で進めれば、ずっと気楽になります。

  1. 公式サイトでミーティングを探す:AA日本ゼネラルサービス、SMART Recovery公式サイト、全日本断酒連盟のサイトに、ミーティング一覧が載っています。地域や曜日、オンラインかどうかで絞り込みましょう。
  2. 「オープン」か「クローズド」かを確認する:AAでは、誰でも参加できる「オープン」と、飲酒の問題を持つ本人だけの「クローズド」があります。様子見なら、オープンミーティングが安心です。
  3. オンラインから始めてもOK:対面が不安なら、カメラをオフにして聞くだけでも構いません。多くのミーティングでは、話さずに参加することが認められています。
  4. 少し早めに到着する:対面の場合、5〜10分前に着くと、世話役の人が声をかけてくれることが多いです。「初めてです」と伝えるだけで十分です。
  5. 話すことを強制されないと知っておく:順番が来ても「パスします」と言えば大丈夫です。費用は基本的に無料で、任意の献金があるだけです。
  6. 最低3〜5回は通ってみる:グループの雰囲気は、会場や日によってまったく違います。1回で判断せず、いくつかのミーティングを試してみましょう。
  7. 参加後に振り返る:「安心できたか」「また来たいと思えたか」を自分に問いかけてみてください。その感覚が、一番信頼できる判断基準です。

断酒を始めたばかりの時期は、心も体も大きく揺れ動きます。禁酒の最初の30日に起こることを知っておくと、ミーティングで話すきっかけにもなります。

なお、毎日大量に飲んでいた方が急にお酒をやめると、離脱症状が出て危険な場合があります。自助グループに参加する前、または並行して、医療機関に相談することをおすすめします。アメリカ薬物乱用・精神衛生管理局(SAMHSA)も、自助グループと専門治療を組み合わせることの大切さを強調しています。

まとめ:完璧な選択より、続けられる選択を

AAには長い歴史と強いエビデンス、そして全国に広がる仲間のネットワークがあります。SMARTリカバリーには科学的なツールと、宗教色のない柔軟なアプローチがあります。

研究が繰り返し示しているのは、あなたが続けて参加できるグループこそが、最も効果のあるグループだということです。合わなければ、別の場所を試せばいい。回復の道は一つではありません。

今日、ミーティングの一覧を開いてみる。それだけでも、立派な一歩です。

Frequently Asked Questions

SMARTリカバリーとAA、どちらの方が効果がありますか?

AAは研究の数が多く、断酒の継続率でほかの治療法と同等以上の効果が示されています。SMARTの研究はまだ少ないものの、熱心に参加すればAAと同程度の結果が出るという報告があります。どちらを選ぶかよりも、続けて参加することが大切です。

AAは宗教団体ですか?

AAは特定の宗教や宗派とは関係のない団体です。12ステップには「神」や「ハイヤーパワー」という言葉が出てきますが、その解釈は個人に任されています。無宗教の方も多く参加しています。

SMARTリカバリーは日本語で参加できますか?

現在、日本語のSMARTリカバリーのミーティングはごく限られており、英語のオンラインミーティングが中心です。日本語で認知行動療法ベースのサポートを受けたい場合は、医療機関や精神保健福祉センターの回復プログラムを探すとよいでしょう。

AAとSMARTリカバリーの両方に参加してもいいですか?

はい、まったく問題ありません。AAでの仲間とのつながりと、SMARTでの具体的なスキルを組み合わせている人もいます。自分にとって役立つものを取り入れることが、回復を長続きさせるコツです。

自助グループの参加にお金はかかりますか?

AA、SMARTリカバリーともに、ミーティングへの参加は基本的に無料です。会場費などのために任意の献金を受け付けていることが多いですが、強制ではありません。断酒会は会費制の場合があるため、事前に確認しておくと安心です。

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